受章の栄誉
我が国の叙勲制度は、明治8年(1875年)の「勲章従軍記章制定ノ件」公布によって開始されました。当初は武官のみが対象でしたが、その後、文官をはじめ教育・社会分野にも拡大されました。生存者に対する叙勲は戦後一時停止していましたが、昭和38年(1963年)に再開し、翌39年4月29日に第一回目の叙勲が行われました。以後、毎年4月29日に「春の叙勲」、11月3日に「秋の叙勲」が定例的に行われるようになり、現在に至っています。
叙勲は、国や公共への功績を上げた各界各層の70歳以上の方に対して贈られますが、平成15年秋より、警察官や自衛官といった危険性の高い業務に永年従事し、社会に功労のあった55歳以上の方についても叙勲が開始されました。
一方、特定の社会的分野において優れた行いの方を称える褒章は、教育、医療、社会福祉、産業振興の分野に尽力された方、自己の危難を顧みず人命の救助に尽力した方、社会奉仕活動に従事し顕著な実績を残した方などに対して春秋叙勲と同日付けで授与されています。
ご受章者は伝達された勲章・褒章を着装し、配偶者同伴で天皇陛下に拝謁します。永年の功績や優れた行いを続けてきた人に対する国家の表彰ですので、その受章の栄誉は生涯忘れることのない慶びとなるでしょう。
〜 目次 〜
▽ 旭日章とは
▽ 瑞宝章とは
▽ 褒章とは
▽ 勲記・章記について
勲章の種類
▽ 旭日章とは
社会の様々な分野における功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた人を表彰する場合に、男女に共通して授与される勲章です。
旭日章は、明治8年に最初の勲章として制定されました。勲章のデザインは、日章を中心に光線(旭光)を配し、鈕(ちゅう)には桐の花葉が用いられています。
※鈕(ちゅう)とは、章と綬の間にある飾りです。
▼旭日章の種類 ※画像をクリックすると拡大します。
勲章 | 授与・伝達式 | 旧制度の勲等 |
---|---|---|
旭日大綬章 |
宮中において授与式を行い、天皇陛下自らが受章者に直接授与されます。 | 勲一等 |
旭日重光章 |
宮中において授与式を行い、天皇陛下臨席のもとで内閣総理大臣が受章者に手交されます。 | 勲二等 |
旭日中綬章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲三等 |
旭日小綬章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲四等 |
旭日双光章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲五等 |
旭日単光章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲六等 |
▽ 瑞宝章とは
国及び地方公共団体の公務、または公共的な業務に長年にわたり従事して功労を積み重ね、成績を挙げた人を表彰する場合に、男女に共通して授与される勲章です。
瑞宝章は、明治21に制定されました。勲章のデザインは、古代の宝であった宝鏡を中心に大小16個の連珠を配して、四条や八条の光線を付し、鈕(ちゅう)には桐の花葉が用いられています。
※鈕(ちゅう)とは、章と綬の間にある飾りです。
▼瑞宝章の種類 ※画像をクリックすると拡大します。
勲章 | 授与・伝達式 | 旧制度の勲等 |
---|---|---|
瑞宝大綬章 |
宮中において授与式を行い、天皇陛下自らが受章者に直接授与されます。 | 勲一等 |
瑞宝重光章 |
宮中において授与式を行い、天皇陛下臨席のもとで内閣総理大臣が受章者に手交されます。 | 勲二等 |
瑞宝中綬章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲三等 |
瑞宝小綬章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲四等 |
瑞宝双光章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲五等 |
瑞宝単光章 | 内閣総理大臣の命を受け、内閣府賞勲局長が所管大臣に伝達し、所管大臣が適宜受章者に伝達されます。 | 勲六等 |
褒章の種類
▽ 褒章とは
特定の社会的分野における、事蹟や徳行のすぐれた方に与えられます。種類は藍綬、黄綬、紫綬、緑綬、紅綬とあって、綬色によってそれぞれ名称づけられております。
▼褒章の種類 ※画像をクリックすると拡大します。
褒章 | 授与 |
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紅綬褒章 |
自己の危険を顧みず人命の救助に尽力した方。 |
緑綬褒章 |
長年にわたり社会に奉仕する活動(ボランティア活動)に従事し、顕著な実績を挙げた方。 |
黄綬褒章 |
農業、商業、工業等の業務に精励し、他の模範となる技術や事績を有する方。 |
紫綬褒章 |
科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた実績を挙げた方。 |
藍綬褒章 |
会社経営、各種団体での活動等を通じて、産業の振興、社会福祉の増進等に優れた業績を挙げた方。 国や地方公共団体から依頼されて行われる公共の事務(保護司、民生・児童委員、調停委員等の事務)に尽力した方。 |
▽ 勲記・章記について
勲記・章記は受章者に対して勲章・褒章とともに与えられる証書のことで、勲章・褒章を受章したことの証明です。
勲章そのものは明治21年の制定以来、変わることなく今日に至っていますが、勲記の書式は新憲法の施行につられて様々な変遷を重ねています。
最初の勲記はお墨付程度の簡略なものでしたが明治9年にその書式は整然としたものに改められました。「天佑ヲ保有シ万世一系ノ帝祚ヲ践タル日本国天皇ハ(肩書、氏名、勲章名)ヲ授与ス即チ比位ニ属スル礼遇及ヒ特権ヲ有セシム」という文章にて、勲六等以上は陛下のご署名入りでありましたが、後の明治18年10月には、陛下のご署名は勲三等以上に改正、勲四等以下は国璽のみをおされることになりました。
この国璽は勲記にかぎり使用されている我国の印章で、明治4年に制定されたものでは、形は純金の立方体、重さが3.5キロもあって、一辺の長さが91ミリあり、印文は「大日本国璽」となっています。この「大」という文字について明確な意味はなく、ただ歴史的に利用された美称であるというのが政府の見解であります。
国璽のほかには「・・・において璽をおさせる」と記されておりますが、国璽はそれ自体重量があるので、勲記の上にのせるだけで、はっきりと印文がでる仕組みになっています。いわゆる普通の印鑑のように「押印」されるわけではありません。国璽は現在、宮内庁侍従職で保管されております。